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東海道53次 16.蒲原
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:板倉秀継
浮世繪之美 - vol.3116

保永堂版は副題「夜之雪」とあり、広重の最高傑作です。当然、狂歌入り版にも多くの期待を寄せるのですが、その平凡な風景に残念と言わざるを得ません。湧き立つ入道雲、聳える富士山、その富士山を凌駕する欅の大木といった情景は、『名所江戸百景』にその完成形を見る近景拡大の構図です。ところで、この風景はどこかで見覚えがあり、遠景の富士山を鎌倉山に代えれば「戸塚」の構図とほぼ同一と看做すことができます。「戸塚」は宿場手前の柏尾の追分辺りを描いていました。とすると、「蒲原」も宿場手前の東海道との分岐点を描写している可能性があります。

吉原から蒲原へ向かう場合、第一の名所スポットは富士川です。前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』「蒲原」は、「冨士川は道中第一の早川也信州八ヶ岳よりながれ出て甲州釜なし川油川早川へ落合て大河となれり又水の出時によりて出口かはる也」と詳細に説明しています。また同図鑑を見ると、その富士川の対岸(西側)には間の宿「岩淵」があって、さらに右(北)に折れる「身延道」が記されています。すなわち、本作品は、この岩淵の追分(一里塚)辺りを描いていると考えられます。富士川の船渡風景を描かないのは、「広重あるある」です。同図鑑には、蒲原宿を過ぎると「新田村」「向田村」とあり、これと狂歌を合わせると、春風に向かって田村を過ぎるとの発句で地名「向田村」と遊び、蒲原は「真袖」(両袖)に梅が香(匂)う宿場であると結んでいます。広重が向田村の梅の花を描いていれば狂歌と完全に一致するのですが、そうなっていないのは、狂歌が構想世界だからです。基本的には実景描写の広重には描きようがないということです。したがって、蒲原手前の岩淵の追分から宿場を想像させるという手法を選択したのでしょう。また、狂歌師の名が「梅香居」とあるので、「梅が(香)かん原」は、自己宣伝なのかもしれません。

春風に 向て田村を すぎ行けば
真袖に匂ふ 梅がかん原
梅香居

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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