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東海道53次 13.沼津
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:小川文彥
浮世繪之美 - vol.3113

沼津宿より駿河国となります。江戸でも駿河町や駿河台など、駿河と名の付くところは富士の眺望に優れるところです。その原点が沼津に始まる駿河国にあることは言うまでもありません。ただし、『東海道名所圖會 巻の五』(『新訂東海道名所図会下』ぺりかん社・2001、p90)に「富士隠れ」という言葉があって、沼津の東は、地形が低く、「愛鷹山に遮られて富士見えず。故にふじがくれという名をよぶ」とあるので、本作品は沼津の西側であると推測できます。そのうえで画中には榜示杭と関札が描かれているので、宿場の西外れであることが分かります。宿場の外れには休憩用の茶屋があるのが通例です。本作品では、その茶屋の背後に、田仕事をする人を含む田園、愛鷹山、そしてこれでもかという程大きな富士の半景が描かれています。

狂歌に目を転じると、沼津堤の花見酒に泥酔する人々を歌い、「沼」と「泥」という縁語で遊んでいます。問題なのは、「沼津堤」がどういう所で、どこにあるのかということです。ヒントは、「名にしおふ」(名前を持つ、有名である)とある点です。前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』「沼津」を参考に、宿場の西側で富士を背にして探ると「千本松原」と記されている場所を発見します(『東海道名所圖會 巻の五』(前掲『新訂東海道名所図会下』p81参照)。この海浜の松原を「沼津堤」と詠んでいるのだと思われます。千本松原の堤と敢えて呼ばないのは、「沼」津と「泥」酔とで遊びたいからです。また、千本「松」原を避けたのは、「桜」の花見酒と合わないからです。かなり技巧的な狂歌です。この狂歌に対して、広重は宿場の西外れの茶屋風景を描いたのですが、その意図は、茶屋で休憩した旅人の眼前に千本松原が広がって見えるはずという想像力を駆使させたのです。狂歌の構想を実景から想像して下さいと丸投げしてしまったという訳です。同様の方法は、小田原ですでに行われていました。

名にしおふ 沼津堤の 花見酒
泥のごとくに 酔しひとむれ
東雲亭於㐂保

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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