東海道53次 12.三嶋
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:板倉秀継
浮世繪之美 - vol.3112
箱根の墨色に対して、三島は白を基調とする雪景色です。狂歌入り版は実景に基づくと考えられますが、広重の東海道の旅景色をそのまま写したと考える必要はありません。シリーズの構成上、三島では雪景色が必要であったとした方が自然です。その理由は、雪によって季節が1つ終わり、新たに再び春が始まるという意味において、雪は出発や再出発を表現する手段として使われることがあるからです。本シリーズに当て嵌めれば、天下の険・箱根峠を越え、相模国から伊豆国にまで至り、この後さらに駿河国へと出発するのですから、三島宿は再出発の地なのです。英泉・広重『木曾街道六拾九次』「日本橋 雪の曙」と並行的に捉えて良いと思われます。したがって、作品背景の雪の富士も、旅の継続と作品の刊行を祝福する縁起物としても描かれています。
前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』「三嶋」によれば、箱根の西側の坂を下り、東見付を過ぎると宿場の手前に大場川に架かる「かん川ばし」があり、その橋を渡ると、三島宿・三嶋明神へと至ります。おそらく、狂歌入り版はその橋と背後の雪積もる富士の景を描いているのだと思われます。これに、早朝、宿場を発ちその景色を眺めれば、降り積もる雪が花のように見えたという内容の狂歌を合わせる仕立てです。「三島」と「見し」が掛詞となっています。狂歌は、雪の三島を旅立つ前提で作られているので、橋の上の旅行く人々の他に、橋の左の旅籠の前では2人の旅人が出立前の別れの挨拶をしているような様子が描かれています。個人的には、シリーズの構成上、先に宿場の雪の景が構想され、それに合わせて狂歌が詠まれたような感想を持ちます。
今も猶 夢路をたどる 心ちかな
はなとみしまの 雪の曙
立川伊志女
歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景
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