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東海道53次 7.藤沢
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:堀田治 / 摺師:品川勝夫
浮世繪之美 - vol.3107

境川に架けられた大鋸(だいぎり)橋、その先南(左)側に江の島道の入り口に当たる第一鳥居と石標があり、反対方向には旅籠が続き、東海道と大山寺(石尊社)へ続く道となっています。狂歌入り版を子細に見ると、橋上には従者を連れた女と女2人旅の姿があって、芸能の神・江の島弁天への参詣と想像がつきます。旅籠の方向に歩む男の1人は、大山寺に奉納する木太刀を肩に担いでいるので、大山参りの一行と思われます。おそらく、背景に描かれる山が大山です。大鋸橋の手前にあった一遍上人が始めた時宗の総本山遊行寺は、保永堂版とは異なって描かれていません。視点が街道の進行方向にあるということでしょう。

狂歌は、ずっと霞がかかって、紫色の藤の花のような藤沢だなあ。雲に日が差し昇る春だから、といった内容でしょうか。朝日に色づく藤沢宿の美しさを詠んだ歌と思われます。「藤」の掛詞の他に、「雲井(居)」という表現によって、現実の空と雲の上の都を暗示し、都に上るということも合わせて表現していると思われます。なお、狂歌には、「昇る」や「上る」ではなく、「登る」という漢字が使われている点が気になります。

そこで広重の作品をもう一度見返すと、大鋸橋の向こう、青色のすやり霞の背後に大山が描かれていることに気付きます。日が昇る、都に上るだけでなく、大山に登るための宿場が実は藤沢であるということが描かれ、同時に狂歌に詠み込まれていたことがここに明らかになります。藤沢宿にはいくつもの名所がありますが、本作品は大山参りをその中心に置いたということです。ちなみに、嶋田・前掲『広重のカメラ眼』(p60)は、この山を大山ではなく、写真構図的に、江の島であることを示唆しています。しかし、狂歌入り版は確かに実景図と捉えることができますが、一方ですやり霞を応用して、違う場所の風景を重ね合わせる、浮世絵の伝統的技法を捨て去ったわけではないことも考えておく必要があります。なぜなら、風景画ではなくて、名所絵であるからです。狂歌を基礎に据えれば、江の島に「登る」という表現には、まったく意味も遊びもなくなってしまいます…。浮世絵の本質および狂歌と絵との関連性を見誤っています。

うちかすむ 色のゆかりの ふぢ沢や
雲井をさして 登る春かな
松吟庵清風

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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