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東海道53次 41.鳴海
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:遠藤光局 / 摺師:栃木義郎
浮世繪之美 - vol.3141

本作品から、尾張国に入ります。『東海道名所圖會 巻の三』(前掲『新訂東海道名所図会中』p58)によれば、「鳴海」は、「むかしは鳴海潟を見わたし、浜づたいに、宮より鳴海まで往来しけるなり」とあって、まさに海鳴りが聞こえた宿場であったことが想像できます。狂歌入り版と保永堂版とはおそらく同じ店舗辺りを描いていると思われます。手前の店舗は寄棟(よせむね)造りの桟(さん)瓦葺きで、2階には黄色の塗籠(ぬりごめ)の連子(れんじ)窓が付いており、その隣の店舗は白壁造りで、2階には白色の塗籠の連子窓が付いています。狂歌入り版の方がより実景性が高く、右側近景に崖上の法面が見えており、海に近い鳴海の状況ではないことが分かります。鳴海宿の東1里にあった「有松」の町並みだからです。それ故、保永堂版には「名物有松絞」という副題が付いています。同名所図会(p63)には、「名産有松絞」とあって、「細き木綿を風流に絞りて、紅藍(くれあい)に染めて商うなり。この市店十余軒あり」と記されています。つまり、広重は、東海道沿いにあった、括り染めの一種である有松絞の店舗を描いたという訳です。なお、手前が京都方向に当たります。

狂歌にある「梅の笠寺」は、前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』「鳴海」を見ると、宿場を出て、天白川に架かる「でんばく橋」を渡った所に、「立ハ笠寺村」、「笠寺くわんをん」とあります。前掲名所図会(p57以下)によると、正式名称は「天林山笠覆寺(てんりんざんりゅうふくじ)」と言い、「本尊十一面観音」です。さらに、「あるとき一村雨来たりて、霊像たちまち雨水に浸す。かの侍女これを悲しみ、みずから被(かず)く菅(すげ)の笠を着せまいらせけり」と続き、「この由縁によって、本尊は今において笠を被きたまうゆえ、世人笠寺という」と記されています。結局、この侍女は高貴な人と結婚する観音霊験譚なのですが、この伝説を前提に狂歌を読み解くと、梅の花咲く笠寺にやって来た鶯が、春雨の中、梅の花笠を着て旅に行くのだろうよという意味になります。「梅の笠寺」は、「梅の笠」と「笠寺」を掛けるものです。和歌などでは、しばしば、梅の花は鶯の笠に見立てられます。ところで、初句の「たがぬひし」は、「誰が縫ひし」と解すれば、誰が縫ったのだろうか、梅の花笠を着けてとなり、狂歌内容は一貫します。絵は有松絞、狂歌は被衣(笠)で、衣繋がりの作品です。ちなみに、笠を縫うとか、笠を着るという言葉は現代の語感とは違いますが、笠を身分の高い人が顔を隠す被衣と同一視していると考えれば、納得できるのではないでしょうか。

たがぬひし 梅の笠寺 春さめに
旅うぐひすの 着てや行らん
果報坊寝待

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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