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東海道53次 38.藤川
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:堀田治 / 摺師:品川勝夫
浮世繪之美 - vol.3138

保永堂版副題「棒鼻ノ圖」の平らかな風景とは全く異なる、雪の降り積もる山間を描写する狂歌入り版です。実を言うと、保永堂版は藤川宿の東口を描いているのに対して、狂歌入り版はさらに東方にあった「山中」の里を写しています。山中の里は、南北朝時代から知られた古い宿場で、別名「宮路山」と呼ばれていました。『東海道名所圖會 巻の三』(前掲『新訂東海道名所図会中』p108)には、「宮路山を今はただ山中とのみいう。むかし持統天皇行幸(みゆき)ならせたまいて、頓宮(かりみや)ありしところなれば、宮路山というとなん」と記され、古歌「君があたり雲井に見つゝ宮路山」とあるように、空高き、山深き地というイメージがあります。広重は、その仮宮・歌枕の地を雪によって覆い、別世界の里として表現しています。次の宿場が徳川家康の出生地である岡崎であることを思案すると、ここで一旦居住まいを正すという意味合いもあるかもしれません。

狂歌は、宿場を通り過ぎようとする旅人の袖を宿の留女が引っ張って纏わり付く様子を詠うものですが、留女が「袖にまつはる」だけでなく、「まつはる ふぢ」と繋げて、その掛け合いが巻き付く藤蔓のようだとも表現しています。静寂な雪の風景を描く浮世絵と嬌声が聞こえそうな日常景を詠み込む狂歌とは、真逆の内容です。これは、狂歌入り版シリーズ共通の棲み分けです。ただし、絵との関連に重心を置くと「袖にまつはる」のは「雪」と考えることも可能で、留女の客引きを纏わり付く雪に例えたと読み解くこともできます。もし狂歌が先にあって、その内容を受けて、広重は雪の降る峠越えの情景を選択したのだとすると、「雪の藤川」は狂歌から生まれたということになります。

ところで、保永堂版副題「棒鼻ノ圖」がなぜ藤川を象徴する作品となるのかについて触れておきます。狂歌入り版が山中の里、別名宮路山を描いていること、「国初将軍家御手習いの御硯水」の「二村山(にそんさん)法蔵寺」がその山中にあること(前掲図会・p110)がヒントです。つまり、宮と家康に縁のある藤川宿であるので、家康が入府した8月1日を記念し、将軍が朝廷(宮)に馬を献上する八朔御馬進献の儀が棒鼻に描かれ、町役等が一行を迎え入れているのです。

行過る 旅人とめて 宿引の
袖にまつはる ふぢ川の駅
常磐園繁躬

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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