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東海道53次 21.鞠子
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:遠藤光局 / 摺師:栃木義郎
浮世繪之美 - vol.3121

保永堂版は、副題「名物茶店」としてとろろ汁を出す山里の茶屋風景を描いていましたが、狂歌入り版も同様に「名物とろヽ汁」の店先です。ただし、保永堂版が弥次喜多を彷彿させる人物を写して構想的であったのに対して、狂歌入り版は、石垣を組んだ西口の見付脇にあった店の状況を実景に比重を置いて描写しています。店先に置いた山駕籠の駕籠舁きがとろろ汁を食べる客と交渉している様子や、木に馬を繋いだ馬子が思案げに佇む姿など、茶屋が客待ちの場所となっている情景表現として興味深く感じられます。鞠子と岡部の間には、宇津ノ谷峠があるので、山駕籠の存在等は確かに現実的です。なお、店内の壁には、「仙女香 京ばし坂本氏」という白粉の広告が見えます。また、名所絵2点、役者絵、美人絵各1点が貼られています。これらは、実景というよりは、スポンサー・版元などの営業的宣伝と考えられます。

狂歌は、通り抜ける駕籠もあれば、止まる駕籠もある。なぜならば、鞠子では神楽が催されているので、といった内容です。遊びとして、「するかごもあり」に「駿河」を、「と(止)まつたり」に「まったり」を掛けています。重ねると、この狂歌は、駿河の神楽はまったりしている、つまりこくのある味わいであると詠っていることが分かります。実は、「駿河神楽」は駿河の神楽一般を意味しているのではなく、安倍川流域山間部や大井川左岸山間部に伝承されている神楽を指した特定名称と理解した方が良いように思います。鞠子は、安倍川水系の丸子川に添った山間部にあって、東海道中で最も小さな宿場です。その名物は、松尾芭蕉の俳句「うめ若菜丸子の宿(しゅく)のとろろ汁」や十返舎一九『東海道中膝栗毛』に登場するとろろ汁だけではなく、この地域一帯に盛んな神楽もあるぞと狂歌は言っているのです。その意味では、広重の絵の方が芭蕉の句からの本歌取りと言ってもよいと思われます。本作品は、狂歌と浮世絵とがそれぞれ棲み分けて、宿場の名所・名物を紹介するという形式の好例です。

通りぬけ するかごもあり とまつたり
神楽のきよくの まりこ宿とて
松園庵芝守

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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營業時間:中午12點~晚上七點