LOGO MENU
LOGO LOGO
LOGO

東海道53次 10.小田原
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:遠藤光局 / 摺師:栃木義郎
浮世繪之美 - vol.3110

近景には意図的にくの字に曲げられた街道を旅人達が行き交う様、中景には浜で地引網を引く様、そして遠景には水平線に帆船が浮かぶ様がそれぞれ描かれています。ただし、題名がなければどこの宿場の海岸線か特定し難いのも事実です。保永堂版に見られるように、小田原の宿場の手前には酒匂川があって、その歩行(かち)渡しが代表的風景です。また、宿場の背後の山側には北条早雲が本拠とした名城小田原城があり、その反対の海側に狂歌入り版が描く海浜風景が広がります。なお、箱根の関所を控え、2日目の宿として利用されることが多く、それらの旅人向けに「外郎(ういろう)売り」が有名です。

さて、酒匂川の歩行渡し、小田原城、そして外郎売りのいずれも描かれていませんが、「広重あるある」として、これらの風景・情景が背後にあると想定して、本作品を楽しむ必要があります。そのうえで狂歌を見ると、沖の船から霞の海に天守の鯱が見えているであろうという素朴な歌となっています。霞を海に見立て、天守の鯱がそこを泳いでいるという情景を想像し、それが海上の船からも見えるであろうというのですから、小田原城を誇っていることは言うまでもありませんし、狂歌の作者が宿場から小田原城の天守を見上げているという状況も目に浮かびます。その小田原城、あるいは天守の鯱を描かない広重の画趣はどこにあるのでしょうか。

画中で目を引くのは、やはり、海岸での地引網の情景です。その様子を手前の茶色の道中合羽を身につけた旅人が眺めているようなのです。嶋田・前景『広重のカメラ眼』(p79)は、この旅人を広重自身、または絵師の視点と考えているようです。しかしながら、絵だけではなく狂歌と合わせて読み解くならば、初めに、霞の海の鯱と地引網によって引き上げられる魚とが対比されていることに気付きます。次に、海の方向を見つめる旅人がその前後小田原城を見ているはずであることも想像されます。なによりも、狂歌入り東海道なのですから、先の旅人は、絵師広重というよりは、狂歌の作者を代弁する人物と見るべきでしょう。ちなみに、広重のユーモアは、鯱が霞の海にいるならば、船からはその鯱が浜の地引網によって引き上げられているかのように写っているという点にこそあるのではないでしょうか。

小田原の 沖の舩より 見えつらん
霞の海の 城の鯱(しゃちほこ)
繁の門雛昌

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

← Back ∣ vol.3110 Next →
浮世繪之美

LOGO
logo
104台北市中山北路一段33巷6號 ∣ Tel:2521-6917
Mobil:0935-991315 ∣
營業時間:中午12點~晚上七點