東海道53次 2.品川
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:遠藤光局 / 摺師:栃木義郎
浮世繪之美 - vol.3102
品川宿背後の御殿山へ連なる高台から鳥瞰する視点の作品です。手前には、天水桶を置く、2軒の店が開いている様子が描かれています。中央の店にはちゃぶ台が置かれ、店前の街道でも同じちゃぶ台を男が運んでいるところから推察すると、この2軒の店は膳を用意して接客する貸座敷と推測されます。品川宿には飯盛女(遊女)を配する旅籠の喧噪が容易に想像されるにもかかわらず、広重はそれを避けています。早朝ということもありますが、保永堂版でも、さらにはその他の品川作品でも、「北」の新吉原に対する「南」の品川というイメージを意図的に回避しているようです。「広重あるある」です。
海上に目を向けると、帆掛け船、帆を降ろした大船(弁才船・千石船)、小舟、そして網を干す漁師町の風景があって、実は品川を特徴づけるのは湊町・漁師町であることを示唆しています。江戸湊は遠浅のため、貢米船や廻船は佃島沖から品川沖に停泊し、瀬取 (せどり)と呼ばれる、親船から小舟に積み替える方法で物資を江戸湊・品川湊に送っていました。名所絵として、品川の主題は、遊女だけでなく、海・湊・漁(海苔の養殖)も重要であって、広重は後者を選択したということです。
狂歌も、遊女ではなく、瀬取をその内容としています。親船から小舟を使って瀬取する様子を、親船と子船の別れに見立て、旅立ちを見送る親子の別れと詠み解いています。つまり、品川宿には、旅の別れの寂しさ、反対に旅からの帰還の喜びという情緒があるということです。狂歌によって、そのことが明らかとなった訳です。狂歌が見送り(送別)をテーマにしていることから、広重も送別会を開く貸座敷を画題に据えたのだということが理解できます。瀬取と見送りを題材にする狂歌が初めにあって、次に広重作品があるのではと感じられ、ここに広重作品の制作上の秘密があるのかもしれません。国貞・美人東海道と広重・保永堂版との関係にも同様な制作上の秘密があることは、すでに過去のブログに掲載した浮世絵講座で度々指摘したとおりです。
送り来る 旅の別も 親船を
見かへりながら 過る品川
花前亭友頼
歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景
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